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解題 ・凡例 |
序 |
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10 | 未来記
原文 |
訓読文 |
現代語訳
第二鎭護國家門者。仁王經云。佛以般若付囑現在未來世諸小國王等。以爲護國祕寶文 其般若者禪宗也。謂境内若有持戒人。則諸天守護其國云云 勝天王般若經云學般若菩薩。若作國王等。有貧賎人。來罵詈恥辱。時王不示威刑云。我是國王法應治剪。即作是念。我於往昔。諸佛世尊前。發大誓願。一切衆生我皆濟拔。令得阿耨菩提。今起瞋則違本願文 四十二章經云。飯惡人百。不如飯一善人。飯千善人。不如飯一持五戒者。飯萬持五戒者。不如飯一須陀洹。飯十萬須陀洹。不如飯一斯陀含。飯百萬斯陀含。不如飯一阿那含。 飯千萬阿那含。不如飯一阿羅漢。飯一億阿羅漢。不如飯一辟支佛。飯十億辟支佛。不如飯一三世諸佛。飯百億三世諸佛。不如飯一無念無住無修無證之者文 所謂無念等者。是此宗之意也。楞嚴經云。佛言。阿難。持此四種律儀。皎如氷霜。一心誦我般怛羅呪。要當選擇戒淸淨者以爲其師。著新淨衣燃香閑居。誦此心佛所說神呪。一百八遍。然後結界建立道場。求於悉地速得現前。於道場中發菩薩願。出入澡浴六時行道。如是不寐經三七日。我自現身至其人前。摩頂安慰令其開悟。誦持衆生。火不能燒。水不能溺。乃至心得正受。一切呪詛一切惡星不能起惡。阿難當知。是呪常有八萬四千那由他等金剛藏王菩薩種族。一一皆有諸金剛衆而爲眷屬。晝夜隨侍。設有衆生於散亂心。心念口持。是金剛王常隨從。何況決定菩提心者。阿難。是娑婆界有八萬四千災變惡星二十八大惡星。出現世時能生災異。有此呪地悉皆銷滅。十二由旬成結界地。諸惡災祥永不能入。是故如來宣示此呪。於未來世。保護初學諸修行者文 禪院恒修。此是白傘蓋法也。鎭護國家之儀明矣。智證大師表云。慈覺大師在唐之日發願曰。吾遥渉蒼波。遠求白法。儻得歸本朝。必建立禪院。其意專爲護國家利衆生之故云云 愚亦欲弘者。蓋是從其聖行也。仍立鎭護國家門矣
第二鎮護国家門とは、仁王経1に云く、「佛、般若を以て現在・未来世の諸小国王等に付囑して、以て護国の祕宝と爲す」と。其の般若とは禅宗なり。謂く境内に若し持戒の人有らば、則ち諸天、其の国を守護す云云
勝天王般若経2に云く、「般若を学す菩薩、若し国王等に作らんとき、貧賎の人有て、来て罵詈恥辱せん。時に王、威刑を示さずして云ふ、我は是れ国王なり。法、應に治剪すべし。即ち是の念を作す。我れ往昔の諸佛世尊の前に於て、大誓願を発す。一切衆生、我れ皆な済拔して、阿耨菩提を得せしめんと。今ま瞋を起さば則ち本願に違せん」と。
四十二章経3に云く、「悪人百に飯するよりは、一の善人に飯するに如かず。千の善人に飯するよりは、一の持五戒者に飯するに如かず。萬の持五戒者に飯するよりは、一の須陀洹4に飯するに如かず。十萬の須陀洹に飯するよりは、一の斯陀含5に飯するに如かず。百萬の斯陀含に飯するよりは、一の阿那含6に飯するに如かず。 千萬の阿那含に飯するよりは、一の阿羅漢7に飯するに如かず。一億の阿羅漢に飯するよりは、一の辟支佛8に飯するに如かず。十億の辟支佛に飯するよりは、一の三世諸佛に飯するに如かず。百億の三世諸佛に飯するよりは、一の無念無住無修無證の者に飯するに如かず」と。所謂無念等とは、是れ此の宗の意なり。
楞厳経9に云く、「佛言く、阿難、此の四種の律儀を持して、皎たること氷霜の如くにし、一心に我が般怛羅呪10を誦せよ。當に戒清浄の者を選択して、以て其の師と爲んことを要す。新浄衣を著し、香を燃して閑居し、此の心佛所説の神呪を誦すること一百八遍。然して後に結界して道場を建立し、悉地11を求めば速に現前することを得ん。道場の中に於て菩薩の願を發し、出入澡浴、六時行道12、是の如くして寝ずして三七日を経ば、我れ自ら身を現じて其の人の前に至て、摩頂安慰13し、其をして開悟せしめん。誦持の衆生は、火も焼くこと能わず。水も溺らすこと能わず。乃至、心に正受を得て、一切呪詛一切悪星も悪を起こすこと能わず。阿難、當に知るべし。是の呪は常に八万四千那由他14等の金剛蔵王菩薩15の種族有り。一一に皆な諸金剛衆有て眷属と爲し、昼夜に隨侍す。設ば衆生有て散乱心に於ても、心に念じ口に持さば、是の金剛王常に随従せん。何に況や決定菩提心の者をや。阿難、是の娑婆界16に八万四千の災変悪星・二十八の大悪星有り。世に出現する時、能く災異を生ぜんも、此の呪有る地には悉く皆な銷滅せん。十二由旬17、結界の地と成て、諸悪災祥、永く入ること能わず。是の故に如来、此の呪を宣示して、未来世に於て、初学の諸の修行者を保護す」と。禅院に恒に修するは、此れ是の白傘蓋法なり。鎮護国家の儀、明かなり。
智證大師の表18に云く、「慈覚大師在唐の日、発願して曰く、吾れ遥かに蒼波を渉て、遠く白法を求む。儻し本朝に帰ることを得ば、必ず禅院を建立せん。其の意、専ら国家を護り、衆生を利せんが爲の故なり云云」と。愚も亦た弘めんと欲するは、蓋し是れ其の聖行に従ふなればなり。仍て鎮護国家門を立つ。
第二鎮護国家門 (第二章 国家を鎮め護るために)
『仁王経』に云く、「仏陀は般若をもって現在・未来世の諸々の小国王等に付囑し、それをまた護国の祕宝とされた」と。その般若とはまさしく禅宗のことである。すなわち、その領内にもし持戒の人があったならば、諸々の天神らは、その国を守護するのである。
『勝天王般若経』に云く、「般若を学ぶ菩薩が、もし国王となったときには、貧しく卑しい人々が来て罵詈雑言を並べて恥辱するとしよう。その時、その王は彼らを処罰せずして言うのである、「私は国王である。仏法こそ(汝らがしているような悪行を)治めるものであろう。そして、このようにも思う。私は過去世において諸仏世尊のみ前にて大誓願を発したのである。一切衆生を私は皆な救い導いて、無上菩提を得させよう、と。いま(汝らに対して)怒りを起こしたならば、その本願に違えることとなろう」と。
『四十二章経』に云く、「悪人百人に食事を施すよりは、一人の善人に食事を施すのに如かず。千の善人に食事を施すよりは、一人の五戒を持する者に食事を施すのに如かず。一万人の五戒を持する者に食事を施すよりは、一人の須陀洹に食事を施すのに如かず。十万人の須陀洹に食事を施すよりは、一人の斯陀含に飯事を施すのに如かず。百万の斯陀含に食事を施すよりは、一人の阿那含に食事を施すのに如かず。 一千万人の阿那含に食事を施すよりは、一人の阿羅漢に食事を施すのに如かず。一億人の阿羅漢に食事を施すよりは、一人の辟支佛に食事を施すのに如かず。十億人の辟支佛に食事を施すよりは、一人の三世諸仏に食事を施すのに如かず。百億人の三世諸仏に食事を施すよりは、一人の無念無住無修無証の者に食事を施すのに如かず」と。ここに言われる「無念無住無修無証の者」とは、まさしく禅宗の(目指す境地に達した)者の意である。
『大佛頂如来密因修証了義諸菩薩万行首楞厳経』に云く、「仏陀は言われた、「阿難よ、この四種の律儀を持して清らかなること氷霜の如くにし、一心に我が般怛羅呪〈大白傘蓋神呪〉を誦えよ。︙ まさに持戒清浄なる者を択んで、その者を師としなければならない。新しき浄衣を着け、香を焚いて閑かな地にて居し、この心佛所説の神呪を誦すこと百八遍。そうして後に結界して道場を建立し、悉地を求めたならば速やかに現前するであろう。道場の中にて菩薩の誓願を発し、沐浴所に出入りする時も、六時行道の時も、常に神呪を誦えて惰眠を貪らず(努力精進して)二十一日を経たならば、私は自ら我が身をその人の前に現し、摩頂安慰して、彼をして開悟するであろう。︙ この般怛羅呪を誦持する衆生は、火によっても焼くことは出来ず、水によって溺らせることは出来ない。乃至、心に正受〈三摩地・三昧〉を得て、いかなる呪詛・いかなる悪星も(彼に対して)災いを起こすことは出来ない。︙ 阿難よ、まさに知るべし、この般怛羅呪(を誦持する衆生に)は常に八万四千那由他の金剛蔵王菩薩の種族があって、その一人一人皆に諸々の金剛衆があって眷属となり、昼夜に随侍するのである。たとえば、心が散乱して(三摩地にない)衆生であっても、(般怛羅呪を)心に念じて口に誦えなたならば、それら金剛王が常に随従するであろう。ましてや菩提心が堅固なる者であればなおさらである。︙ 阿難よ、この娑婆界〈忍土〉には八万四千の災厄を司る悪星、二十八の大悪星がある。その星が世に出現する時には災害が生ぜるけれども、この般怛羅呪(を誦持する者が)がある土地には、それら悪星は決して現れることがない。十二由旬四方が結界の地となって、諸々の悪しき災厄の前兆すら永く現れることはない。そのようなことから、如来はこの般怛羅呪を宣示して、未来世における初学の修行者らを保護するのである」と。禅院にて常に修すのは、この白傘蓋法〈般怛羅呪〉である。(禅宗が)国家を鎮め護る教えであることは、明らかであろう。
智證大師の上表文に云く、「慈覚大師円仁が唐にありし日、誓願を発して言われた、「私は日本より遥かなる支那へと大海原を渡り、はるばる仏陀の清らかな法を求めてきた。もしこれから日本へと無事帰ることが出来たならば、必ず禅院を建立する。その意図は、もっぱら国家を護り、衆生を利するためである」云云」と。愚かな私もまた(禅を)弘めようと欲するのは、まさしく(慈覚大師の)聖なる行に倣おうとしてのことである。
以上のことから鎮護国家門として章立てたのである。
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