真言宗泉涌寺派大本山 法楽寺

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‡ 「令第三 僧尼令」対訳

養老律令とは |  「第七 僧尼令」対訳

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1.養老律令について

第一 観玄象条

凡僧尼。上観玄象。仮説灾祥。語及国家。妖惑百姓。併習読兵書。殺人姧盗。及詐称得聖道。並依法律。付官司科罪。

僧尼が、天文を観測(占星術)して、真偽の知れない災難・吉祥が起こることを主張し、語ること国家に及んで、庶民を妖惑。ならびに兵法書を習読し、殺人あるいは性交渉。および聖なる境地を得たとの虚言したならば、法律にしたがって、官吏に引き渡して罪を科すこと。

【注】
* 出家者が、占いや労働などによって食を得ることを、邪命養身[じゃみょうようしん]という。得度の時に出家者が生活を営む上でしてはならない四つの行為の一つとして戒められる。また、『梵網経』ではこれを第二十九軽戒としている。
* 具足戒をうけた僧侶つまり比丘が、性交渉、値五銭以上の窃盗、殺人あるいは殺人教唆や自殺の奨励、聖なる境地を得たと虚言することは、律蔵において最も重大とされる罪。これを、四波羅夷罪[しはらいざい]という。犯した者はただちに僧団から永久追放される。この罪を犯して追放された者は、二度と僧侶となることが出来ない。

第二 ト相吉凶条

凡僧尼。卜相吉凶。及小道巫術療病者。皆還俗。其依仏法。持咒救疾。不在禁限。

僧尼が、吉凶を占い、あるいは祈祷によって病者の治療を行えば、すべて還俗のこと。仏法に根拠があって、咒を用いて病から救う場合は、この限りではない。

【注】
* いくつかの経説によれば、出家者は医療に(施術者として)関わってはならないとされる。
* この条では、仏教の経典などに根拠があって行われる祈祷は禁止されていない。つまり、根拠不明の祈祷、呪術を禁止している。

第三 自還俗条

凡僧尼自還俗者。三綱録其貫属。京経僧綱。自餘経国司。並申省除附。若三綱及師主。隠而不申。卅日以上。五十日苦使。六十日以上者。百日苦使。

僧尼が許可無く還俗したならば、三綱[さんごう]はその者の本籍地の戸籍に(その旨を)記録すること。都にある者は僧綱[そうごう]に報告し、その他は国司に報告のこと。さらに治部省(または民部省)に申告して僧籍を廃棄・一般の戸籍に記録すること。もし三綱あるいは師僧が、これを隠匿して申告せずに、三十日以上経過していれば、五十日間の苦使。六十日以上であれば、百日間の苦使を科す。

第四 三宝物条

凡僧尼。将三宝物。餉遺官人。若合構朋党。擾乱徒衆。及罵辱三綱。凌突長宿者。百日苦使。若集論事。辞状正直。以理陳者。不在此例。

僧尼が、三宝の所有物を、官人に贈答。もしくは徒党を組んで、寺院内の秩序を乱す。または三綱を誹謗して、上座の僧侶を貶めたならば、百日間の苦使を科す。もし集会しての議論であり、その言うところに非が無く、正統な理由を以て(上座の僧侶を)諫めたのであれば、この限りではない。

第五 非寺院条

凡僧尼。非在寺院。別立道場。聚衆教化。并妄説罪福。及殴撃長宿者。皆還俗。国郡官司。知而不禁止者。依律科罪。其有乞食者。三綱連署。経国郡司。勘知精進練行。判許。京内仍経玄蕃知。並須午以前。捧鉢告乞。不得因此更乞余物。

僧尼が、寺院に在らず、別に道場を建てて、人々を集めて教化し、妄りに罪福を説き、あるいは上座の僧侶を暴行したならば、すべて還俗のこと。国や群の役人で、これを知っていながら罰しない者は、法律によって罪を科すこと。托鉢を行う者があれば、三綱は連署して、国司・郡司に報告のこと。(その者の行う托鉢が金品をねだる「物乞い」ではなく、正しく仏法に基づく)精進練行であるのがわかれば、許可すること。都の中であれば玄蕃寮に報告して知らせること。正午以前(午前中)に、鉢を携えて乞食すること。この条件以外で托鉢(物を乞うことを)してはならない。

【注】
* 律蔵では、僧侶が別の僧侶を暴行した場合の罪は、波逸提[はいつだい]であって、波羅夷つまり還俗ではない。しかし、僧尼令ではこれを還俗としている。また、教化活動を行って「妄りに罪福を説」いた者も還俗としている。朝廷は、僧侶が人心掌握して反乱を起こすことを極度に警戒していたことが判る。
* 当時すでに生活のために出家の姿をして物乞いをする者が多数あったという。また、正式に出家した者であっても、その動機が税金や苦役逃れであった者、いわゆる賊心入道も多数あったというから、それらを取り締まるためのもの。
* 仏教の僧侶が午前中しか托鉢してはならないのは、釈尊以来の伝統。その故は、僧侶が托鉢するのは、その日の糧を得るためであり、それは正午までに食し終えなければならないものであるから、必然的に午前中に限られる。日本ではしばしば午後に、該当にぽつんとたって托鉢のまねごとのような行為をしている者が見られるが、全くの非法。また、毎日托鉢に出、自分が托鉢によって得たもののみを食して生活するのは、「常乞食[じょうこつじき]」といって十三頭陀行の一つ。厳しく質素な生活を送ることを旨とする僧、たとえば仏在世ではマハーカッサパ尊者がこれを行っていた。

第六 取童子条

凡僧聴近親郷里。取信心童子供侍。年至十七。各還本色。其尼取婦女情願者。

僧が近親者・郷里から、信心ある童子を引き取って身の回りの世話をさせることを許す。年齢が十七才となれば、それぞれ郷里に返すこと。尼の場合は(身の回りの世話をする)意志のある婦女を引き取ること。

【注】
* 僧侶が厳密に戒律にそった生活を送ろうとするならば、在家信者で寺に起居する者、これを浄人というが、その助けが必須。朝廷は、僧侶が戒律に沿って生活を送ることを奨励し、その様な僧侶であれば援助した。そうしていれば、朝廷にたいして反乱を起こす、僧侶が政治に関わろうとする、ということがないからである。

第七 飲酒条

凡僧尼。飲酒。食肉。服五辛者。卅日苦使。若為疾病薬分所須。三綱給其日限。若飲酒酔乱。及与人闘打者。各還俗。

僧尼が、酒を飲み、肉を食い、五辛を服したならば、三十日間の苦使を科す。もし疾病のための薬として用いるならば、三綱はその日限を設けること。もし酒を飲んで酔い乱れ、人と争って暴行したならば、それぞれ還俗のこと。

【注】
* 僧侶が酒を飲むことは、律蔵ならびに菩薩戒に違反する罪。また、律蔵において、他に適当な医薬が内場合に限り、薬として酒を服することが許されている。この条は、その律蔵の所説を受けての例外を設けている。
* 肉を食い、五辛を服することを禁じるのは、『梵網経』所説の菩薩戒に限られる。もっとも、律蔵でもニンニクを服すること、ならびに肉を自分から望んで食べることなどを禁じる。五辛とは、にんにく・にら・ねぎ・らっきょう・のびるの五種類の野菜(諸説あり)。

第八 有事可論条

凡僧尼。有事須論。不縁所司。輙上表啓。并擾乱官家。妄相嘱請者。五十日苦使。再犯者。百日苦使。若有官司及僧綱。断決不平。理有屈滞。須申論者。不在此例。

僧尼は、有事に論ずべからず(政治に口を差し挟んではならない)。その地の役人を経由せずに、安易に政府に上申書など出して、あるいは政府の秩序を乱し、妄りにことづけて(政府の意向に)自身の意向を差し挟もうとすれば、五十日間の苦使を科す。再犯者は、百日間の苦使を科す。もし役所および僧綱の、政治決断に不平があり、それが不条理なもので、議論の余地がある場合は、この限りではない。

第九 作音楽条

凡僧尼作音楽。及博戯者。百日苦使。碁琴不在制限。

僧尼が音楽をたしなみ、また博打をしたならば、百日間の苦使を科す。ただし囲碁・琴はこの限りではない。

【注】
* 僧侶が音楽をたしなみ、博打にふけることは戒と律の両方で禁じられている。囲碁や琴も例外ではない。しかし、なぜか朝廷はこれについて許可を与えている。だからといって、僧侶がこれを行って良いわけではない。国法で罰せられない、というだけに過ぎない。

第十 聴着木蘭条

凡僧尼。聴着木蘭。青碧。皂。黄。及懐色等衣。余色。及綾羅錦綺。並不得服用。違者各十日苦使。輙着俗衣者。百日苦使。

僧尼が、木蘭・青碧・皂・黄、および壊色[えじき]などの衣を着ることを許す。それ以外の色、また綾・羅・錦・綺など(の素材)、これらは着用してはならない。違反した者はそれぞれ十日間の苦使を科す。安易に俗服を着たならば、百日間の苦使を科す。

【注】
* 僧侶が唯一着用できる衣類である袈裟あるいは衣の色は、律蔵にて規定されている。それを受け鈔ての条であろう。それらの色を着ることを許す、などというのではなく、律蔵ではそれらの色のものしか着てはならないのである。また、律蔵では、袈裟の衣料について、麻や綿、毛、絹などを許している。が、ここではこれを、おそらくは『四分律』の注釈書たる道宣の『四分律行事鈔』の所説を受けて禁じている。

第十一 停婦女条

凡寺僧房停婦女。尼房停男夫。経一宿以上。其所由人。十日苦使。五日以上。卅日苦使。十日以上。百日苦使。三綱知而聴者。同所由人罪。

寺・僧坊に女性を宿泊させること、尼坊に男性を宿泊させること、一日以上であれば、それを許可した者に、十日間の苦使を科す。五日以上であれば、三十日間の苦使を科す。十日以上であれば、百日間の苦使を科す。三綱が(宿泊させていることを)知っていて許したのであれば、(三綱にも)同等の苦使を科す。

【注】
* 僧坊に異性を宿泊させることは一切出来ない。また、在家信者で同性のものであっても、一定日数以上これと同宿することも、律蔵にて禁じられている。

第十二 不得輙入尼寺条

凡僧不得輙入尼寺。尼不得輙入僧寺。其有観省師主。及死病看問。斎戒。功徳。聴学者聴。

僧が安易に尼寺に入ってはならない。尼は安易に僧寺に入ってはならない。師僧を訪問すること、あるいは死の床についているのを見舞いに行くこと、布薩・功徳行・仏教の学習のための場合は許す。

【注】
* 律蔵にて、僧侶が僧伽の許可無く尼寺に赴くことは禁じられている。ただし、この条にあるような場合で、僧伽からの許可がある場合は可。ただし、日没までに尼寺から退出しなければならない。

第十三 禅行条

凡僧尼。有禅行修道。意楽寂静。不交於俗。欲求山居服餌者。三綱連署。在京者。僧綱経玄蕃。在外者。三綱経国郡。勘実並録申官。判下山居所隷国郡。毎知在山。不得別向他処。

僧尼で、冥想に励み修行に熱心な者があり、寂静を願い求めて、俗世間に交わらず、山に入って生活することを求める者があったならば、三綱が連署して、都にある者であれば、僧綱が玄蕃寮に報告すること。地方の者は、三綱が国司・郡司に報告すること。その真偽を確かめて記録し役所に報告し、許可の場合は(僧尼が)生活する山を治める役所に下知させること。たびたび(その僧尼が本当に)山にて生活しているか確かめなければならない。許可した以外の別の場所に行ってはならない。

【注】
* 朝廷は、誰でも彼でも山で修行することを禁じていたわけでないことが、この条から知られる。山林にこもって瞑想に励むことも、釈尊以来の伝統的修行の一つで、これを朝廷も許していた。しかし、やはり山林など朝廷の目が届かぬところで僧侶が活動するのは、万一謀反の企みなどされるなどの可能性もあって、為政者にとって危険である。よって、この条を設けたのであろう。

第十四 任僧綱条

凡任僧綱(謂律師以上)。必須用徳行能化徒衆。道俗欽仰。綱維法務者。所挙徒衆。皆連署牒官。若有阿党朋扇。浪挙無徳者。百日苦使。一任以後。不得輙換。若有過罰。及老病不任者。即依上法簡換。

僧綱を任じるにあたっては、必ず徳行あってよく衆僧を指導でき、出家・在家の人々から尊敬され、寺務を監督・遂行できる者を登用すべきこと。推薦する衆僧らは、全員が連署して朝廷に文書を提出すること。もし権力におもねる者達が徒党を組み、(不適格な)無徳の者を推薦したならば、百日間の苦使を科す。一度任じた後は、安易に代えてはならない。もし(僧綱に任じられた者が)過失や罪を犯した場合、あるいは老衰・疾病によって(僧綱の)任務に堪えられない者があった場合は、ただちに上記の法によって選び代えること。

第十五 修営条

凡僧尼有犯苦使者。修営功徳。料理仏殿。及灑掃等使。須有功程。若三綱顔面不使者。即准所縦日罰苦使。其有事故。須聴許者。並須審其事情。知実。然後依請。如有意故。無状輙許者。輙許之人。与妄請人同罪。

僧尼が苦使を科すべき罪を犯したならば、(経典を書写したり仏像を造るなど)功徳を行わせ、(堂塔に丹を塗るなど)仏殿を修理させ、および(寺院内を)掃除などさせること。その作業量を決めておくこと。もし三綱が敢えてさせるべき作業をさせなければ、ただちにその日数に応じて罰し苦使を科すこと。もしやんごとない事情があり、(作業の免除を)許可するならば、その事情を審査すること。事実を確認し、その後に可否を決定すること。免除の理由が、事実でないのに安易に許可すれば、許可した者と、虚偽の申告をした者とを同罪とすること。

第十六 方便条

凡僧尼。詐為方便。移名他者。還俗。依律科罪。其所由人与同罪。

僧尼が、(朝廷を)欺く手段を講じて、自身の僧籍を俗人に与えたならば、還俗のこと。法律によって罪を科す。与えられた者も同罪とする。

【注】
* 実際にこのような事例があったことが知られる。脱税などの為に、俗人が僧侶からその籍を金で買っていたという。売った僧侶は無論籍がないので還俗する。

第十七 有私事条

凡僧尼。有私事訴訟。来詣官司者。権依俗形参事。其佐官以上。及三綱。為衆事。若功徳。須詣官司者。並設床席。

僧尼が、私事の訴訟を起こして、役所を訪れるならば、一時的に(袈裟衣を脱ぎ)俗人の服装で参じること。その位が(僧綱の録事である)佐官以上、あるいは三綱の者が、衆僧、もしくは功徳のために、役所を訪れるときは、床席を設け(迎え)ること。

【注】
* 先の第十条において、「輙着俗衣者。百日苦使」としていたが、ここでは「有私事訴訟。来詣官司者。権依俗形参事」と、僧侶であっても私事の訴訟について役所を訪れる際は、俗服を着なければならないと規定している。

第十八 不得私蓄条

凡僧尼。不得私畜園宅財物。及興販出息。

僧尼が、私的に土地・屋敷・財物を所有し、また販売・営利活動してはならない。

【注】
* 経済活動、あるいは営利活動をすることは、経説ならびに律蔵にて、僧侶がなすべきでないと規定され、あるいは禁じられている行為。

第十九 遇三位已上条

凡僧尼。於道路遇三位以上者隠。五位以上。斂馬相揖而過。若歩者隠。

僧尼が、道路で三位以上の人と遇ったならば身を隠すこと。五位以上ならば、下馬して会釈して過ぎること。もし歩きであれば身を隠すこと。

【注】
* 僧尼令が編纂された当時、朝廷に公式に認められた僧侶であったとしても、僧侶は後代のような高級官僚の如き地位になかったことを示している。

第二十 身死条

凡僧尼等身死。三綱月別経国司。国司毎年附朝集使申官。其京内。僧綱季別経玄蕃。亦年終申官。

僧尼などの死亡があれば、三綱は月ごとに国司に報告すること。国司は毎年に朝集使[ちょうしゅうし]に報告書を持たせて太政官に報告すること。(僧尼の死亡が)都内であれば、僧綱は季節毎に玄蕃寮に報告し、これを年末に太政官に報告すること。

第二十一 准格律条

凡僧尼有犯。准格律。合徒年以上者。還俗。許以告牒当徒一年。若有余罪。自依律科断。如犯百杖以下。毎杖十令苦使十日。若罪不至還俗。及雖応還俗。未判詑並散禁。如苦使条制外。復犯罪不至還俗者。令三綱依仏法量事科罰。其還俗并被罰之人。不得告本寺三綱。及衆事。若謀大逆。謀叛。及妖言惑衆者。不在此例。

僧尼に犯罪があったとき、格・律に準じて、徒一年以上の刑となるならば、還俗のこと。僧籍を剥奪することをもって徒一年の刑に充当することを許す。もし余罪があれば、法律に照らして処罰すること。百杖[ひゃくじょう]以下の刑ならば、杖十毎に苦使十日間を(代わりとして)科すこと。もし罪が還俗に処するほどでなくとも、あるいは還俗に相当する罪であっても、刑が確定するまではいずれも幽閉すること。(国法としての法律における)苦使に科す以外の(仏教の律蔵に違反した)罪を犯した場合で、それが(「性交渉・窃盗・殺人・宗教的虚言」のいずれか)還俗に相当する罪でなかったならば、三綱に律蔵に基づいて罰を与えさせること。還俗や刑罰を科せられた者は、その者が籍を置いている寺院や三綱、および衆僧を訴えることは出来ない。もし(寺院や三綱、衆僧が)国家転覆、謀叛、および妖しい言葉で庶民を惑わしている場合は、この限りではない。

第二十二 私度条

凡有私度。及冒名相代。并已判還俗。仍被法服者。依律科断。師主三綱。及同房人知情者。各還俗。雖非同房。知情容止。経一宿以上。皆百日苦使。即僧尼知情。居止浮逃人。経一宿以上者。亦百日苦使。本罪重者。依律論。

国の許可を得ずして私的に出家した者、あるいは他人になりすまして出家の許可を得た者、また既に(罪を犯して)還俗に処された者が、袈裟衣を着用したならば、法律に照らして処罰すること。師僧・三綱、および同じ僧坊で生活する僧侶で(その者が法律を犯しているという)事実を知って(放置して)いたならば、それぞれ還俗に処する。同じ僧坊で生活する僧侶でなくとも、事実を知っていたながら容認し、一晩以上を経たならば、例外なく百日間の苦使を科す。僧尼が(違法の)事実を知りながら、逃亡者を寺内に留め、一晩以上を経たならば、また百日間の苦使を科すこと。その犯した罪が重大な場合は、法律に照らして判断すること。

第二十三 教化条

凡僧尼等。令俗人付其経像。歴門教化者。百日苦使。其俗人者。依律論。

僧尼などで、俗人に経典や仏像を授け、家々を巡って布教活動したならば、百日間の苦使を科すこと。俗人については、法律によって判断すること。

【注】
* とにかく朝廷は、僧侶が人心を仏教という宗教によってつかみ、結束させることを恐れていた。この条もまた、それを表すもの。

第二十四 出家条

凡家人奴婢等。若有出家。後犯還俗。及自還俗者。並追帰旧主。各依本色。其私度人。縦有経業。不在度限。

使用人・下僕などが、もし出家し、後に(罪を犯して)還俗に処せられた場合、あるいは自主的に還俗した場合は、強制的に元の雇い主・所有者の元に返し、それぞれの身分に戻すこと。国の許可無く私的に出家した者は、たとえ(税金逃れや生活のためではなく)本当に修行を重ねていたとしても、僧侶として認めないこと。

【注】
* 私的に出家した者、これを私度僧というが、奈良中期から末期にかけ、山間部などにあふれていた。有象無象の者から、中には真に道心ある優れた者まで様々であったようである。空海も唐に渡航する直前まで、四国から大和葛城一体を渉猟する私度僧であったことが知られている。

第二十五 外国寺条

凡僧尼。有犯百日苦使経三度。改配外国寺。仍不得配入畿内。

僧尼が、百日間の苦使を科されること三度に及べば、在籍する寺を去らせて外国の寺に所属させること。この場合畿内の寺院に所属させることは出来ない。

【注】
* 律蔵では、ある僧侶がたびたび悪事を行うために、僧伽から諫められること三度におよび、それでも改めることがなければ、その僧侶はその寺院並びに地域から追放処分となる。

第二十六 布施条

凡斎会。不得以奴婢牛馬。及兵器充布施。其僧尼。不得輙受。

寺院・僧侶に対して布施をする法会にて、下僕や牛馬、および兵器をもって布施とすることは出来ない。僧尼も、それらを安易に受けることは出来ない。

【注】
* 僧侶が牛馬や奴隷などを蓄えることは律蔵で禁じられている。また、兵器を蓄えることは菩薩戒において禁じられている。

第二十七 焚身捨身条

凡僧尼不得焚身捨身。若違。及所由者並依律科断。

僧尼が身体の一部を燃やして仏陀・経典への供養としたり身を捨てて供養とすることは出来ない。もし違反すれば、違反者は法律によって処罰される。

【注】
* 身体の一部あるいは全身を燃やすことによって供養とすることを、焼身供養という。法華経や梵網経などに説かれるが、これを実行することは律蔵の規定に違反する。
しかし、これは元朝以降の比較的近年の支那において、特に具足戒あるいは菩薩戒を受けるに先立って、なんらかの形で焼身供養することが行われている。たとえば、支那僧には、頭頂部に九つの火傷痕を持つ者が多くあるが、これがまさに焼身供養したことの痕跡。受戒前に、人体で最も尊い(重要な)頭を強い香の灸によって焼くことにより、懺悔と供養とするのである。
日本でもこれを実践する者が過去多数あったが、為政者からすれば人心をむやみに惑わせる、あるいはそれを行う者に過度に信仰を集め得る(カルト的)行為であって、迷惑な話であった。

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